基準9:社会連携・社会貢献
「地域政策研究センター」による積極的な地域活性化活動
取組み事例
「地域政策研究センター」が主体となり、岩手県内の地域団体等から公募した地域課題に対し、課題解決プランの策定あるいは研究成果を実装することで課題解決に取り組むための研究費支援等の全学的な体制を設けている。このプロジェクトに当該短期大学部も継続して取り組み、「女性の社会増に向けた効果的な施策形成のための調査研究」「農業法人等の連携による新たな福利厚生システムの構築」など、当該短期大学部の教員による研究成果を生かし、行政機関や地域の高等学校等も参画して地域連携を推進し、地域課題の解決へ貢献していることは評価できる。
ここがポイント
- 地域貢献を目的として、岩手県や地域団体が抱える課題に対応する「地域政策研究センター」を設置している。
- 課題解決プランの作成や、教員の研究成果の実装を通じて課題解決に取り組んでおり、短期大学部としても幅広いテーマに継続して取り組んでいる。
- 行政機関や高等学校も参画して地域課題解決に取り組んでおり、岩手県全体の活性化に繋がっている。
大学からのコメント
岩手県立大学(以下「本学」という。)地域政策研究センターが実施する「地域協働研究」として、宮古短期大学部(以下「本学部」という。)が取組んでいる研究テーマとして2課題を紹介する。 (1) 「農業法人等の連携による新たな福利厚生システムの構築」では、農業の魅力や雇用力を向上させる「農業版働き方改革」ともいえる新たな福利厚生システムの開発を行っている。本研究では、①農業法人等における福利厚生の基礎調査を実施する(令和元年度に県農業普及技術課が実施した調査データの補完)、②岩手県立農業大学校(以下「農大」という。)の学生や就農希望者、就農後間もない若手就農者等を対象としたアンケート(聞き取り)調査を実施する、③従業員の利便性を考慮した福利厚生サービス利用システム(スマホアプリ)を試作開発する、④農大生と本学部生の福利厚生に対する考え方を比較するなどの調査・研究を行った。 この結果、農大生や就農希望者へのアンケート調査では雇用就農先の選択において、福利厚生は重要な位置を占めることが明らかになった。今回の調査では、農大生の卒業生の約6割が卒業後は農業生産法人への就職を希望する(農業生産法人で知識・技術を習得したのちに独立就農を目指すとの回答も含む)と回答している。全体の約74%は就農先を決定する際に、福利厚生を重要視すると回答している。その一方で25%程度は福利厚生を重要視しない、あるいはよくわからないと回答しており、農業生産法人における福利厚生に関する周知が効果的ではない可能性も浮き彫りとなった。なお、併せて、県内農業法人等が共有して使用できる福利厚生プラットフォームの試作も行っている。 (2) 「女性の社会増に向けた効果的な施策形成のための調査研究」では、持続可能なまちづくりを推進するうえでは、若年層の人口流出に歯止めをかける必要があり、とくに若年女性の転出超過を抑制するため、宮古市として有効な施策の実施が必要であるとの問題意識をもっている。本研究では、こうした点を踏まえ、まずは東北地方の若年女性の転出状況やその理由を分析している。 この結果、若年女性が流出するという状況は、ただ単純に「若年女性が東京圏に流出」するという、一面的な事態ではなく、その転出先が、東京圏のみならず、各県の県庁所在地や宮城県などの大都市圏であったりと、広範囲にわたっており、必ずしも「一極集中」ではないことが明らかとなった。また、その転出理由も、勉学や仕事のやりがいを求めるものであったり、伸び悩む収入を増やそうとするものであったりと、やはり多様である。換言すれば、故郷での、やりがいや収入を含めた「選択肢の少なさ」が、流出の大きな要因といえる。 もっとも、「若年女性」とひとくくりにするのもまた危険であり、15~19歳、20~24歳、25~29歳、さらに30歳以上・・・と、それぞれの年齢階層が、それぞれの理由で、それぞれの目的地に向けて、流出しているという、一様ではない実態も看過してはならない。仮に、こうした状況に対応する施策が必要なのであれば、多様な流出の実態や要因に応じた、きめ細かい施策を推進すべきであろう。すべてを包括するような施策は、決して効果的ではないし、これで現状を変えることも容易ではないといった点が、本研究では明らかとなっている。 なお、「宮古市まち・ひと・しごと創生総合戦略市民推進委員会」に本学部生が委員のひとりとして参画しているが、個々人の関与を取り上げることはできないものの、委員会の経過や結果については、宮古市Webサイトの「宮古市まち・ひと・しごと創生総合戦略の取り組みに係る効果検証について」で確認できるので、参照されたい。
