基準9:社会連携・社会貢献
「ウズベキスタン学術交流プロジェクト」を通じた研究及び社会貢献活動
取組み事例
教育研究のグローバル化に向けた国際的な社会貢献として、ウズベキスタン共和国において現地の研究協力者と協働で古代仏教遺跡の調査・研究及び保存修復に取り組む「ウズベキスタン学術交流プロジェクト」を実施しており、文部科学省の推進事業の採択期間が終了した後にも全学的な支援のもと大学事業として継続し、調査・研究の成果をメディアを通じて広く公表することで社会に還元している。また、現地での書籍の寄贈や、日本語及び日本文化の教科書の出版等を通じて交流を深めており、大学の特性や専門性を生かした国際的な研究活動を通じて、国際交流、社会貢献、教育研究等の複数の面で優れた成果を上げていることは評価できる。
ここがポイント
- 複数の学部から参加者がおり、大学の専門性を生かした活動を行っている。
- 調査・研究及び保存修復を通じた現地協力者との交流、ウズベキスタンの大学への書籍寄贈、現地での日本語及び日本文化の教科書出版といったかたちで現地との交流を継続している。
- 調査・研究の成果を、テレビ等のメディアを通じ広く社会に公表している。
大学からのコメント
ウズベキスタン共和国(以下、共和国)には、壮麗なイスラム建築を擁する大都市が点在しており、人口の大半をイスラム教徒が占めるが、同国内にイスラム化以前の仏教遺跡があることは、仏教文化を有する日本との重要な接点の一つと言える。 立正大学ウズベキスタン学術調査隊(以下、調査隊)は、故加藤九祚氏(国立民族学博物館名誉教授)によるテルメズ市郊外に位置する仏教遺跡の調査活動を継承し、特に本学の仏教・考古・歴史・地理分野の知見をいかして、2014年から現地遺跡の調査に従事してきた。 カラテペ遺跡は、いまだに全貌が解明されていない2~3世紀クシャーン朝時代の仏教遺跡で、ロシア・フランス・中国のみならず、仏教と関わりの深い韓国や日本もその調査に従事してきた。調査隊の活動はそうした研究の中に位置づけられる。 2017年度から3ヶ年は、この活動を主軸としたプロジェクトが、文部科学省の「私立大学研究ブランディング事業」として支援を受けた。2018年には、調査隊が発掘に関わった彩色壁画の情報が『朝日新聞』に掲載された。またBSフジ制作会社が、調査隊の活動に関する番組を2度、制作・放映した。なお、調査には本学院生数名が同行しており、その体験は後に文化財に関わることになった彼らに資するものとなった。 また本学の仏教・文・経営・心理の4学部から選出いただいた先生方に共和国内で日本に関わる講演をしていただき、その講演録を日本語・ウズベク語2カ国語の書籍として共和国内で刊行した。さらに、共和国の日常を日本向けに紹介したニュースレター『ウズりす』を期間中4号まで刊行し、本学教員・学生および宗門関係各所や講演会にて配布し、両国の文化理解と交流に貢献した。また事業最終期の2020年3月にはカラテペ遺跡の発掘報告書の公刊によって、学術成果をまとめた。 2020年2月以降は、コロナ禍により現地での活動は困難となったが、文化庁の文化遺産保護国際貢献事業に採択され、ズルマラ仏塔に関する共同調査報告書を刊行した。ズルマラは2世紀創建とみられる仏塔で、調査隊は2016年に調査に着手、2018年と2019年に周辺を発掘した。 本学は、コロナ禍においても、以上の共同報告の他にオンライン会議への参加、共和国の大学との図書交換により交流を継続してきた。 今後は、仏教遺跡の研究を基盤に、中央アジアにおける宗教ツーリズムおよびジオパークの可能性の探究へと研究を展開させ、交流を深化させていく予定である。
