地域の独自性を生かしたアドバンスト・カリキュラム

種別 | 歯学教育評価 |
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年度 | 2022年度 |
区分 | 国立 |
規模(収容定員) | ~4,000人 |
関連タグ |
取組み事例
アウトカム基盤型教育体系のもと、学習成果(アウトカム)を5つのコンピテンスと29のコンピテンシーとして設定しており、全人的歯科医療の実践、地域医療への貢献及び国際社会で活躍する能力を修得するという教育目標の実現のために、歯学教育モデル・コア・カリキュラムに収載されないアドバンスト・カリキュラムを設置している。特に、地域の独自性を生かした「離島巡回歯科診療同行実習」「離島歯科医療実習」については、人口減により増えることが予想される無歯科医地区における歯科保健医療のあり方を考える際に、他大学にとっても参考になるものであり高く評価できる(評価の視点2-3)。
ここがポイント
- アドバンスト・カリキュラムにおいて、将来の歯科保健医療の参考ともなりうる離島歯科医療実習を行っている。
大学からのコメント
南北600㎞にわたる県域を持つ鹿児島県は、有人離島28島を有し、在住する人口は約17万人と全国で最多となっている。そのため、鹿児島大学歯学部は離島においても本土同様、地域に根ざした医療を実践する人材を育成する責務を負っている。本学ではこれらの状況に鑑み、6年間で修得を目指すコンピテンス(学修目標)の一つに「地域医療とヘルスプロモーション」を設置し、低学年時から一貫して本コンピテンスの修得を目指す教育カリキュラムを構築し運用している。「離島巡回歯科診療同行実習」および「離島歯科医療実習」はこれらのカリキュラムの最終段階として、歯学部5~6年生で行われる臨床実習中に提供されるプログラムである。 「離島巡回歯科診療同行実習」は、鹿児島県からの委託事業として鹿児島県歯科医師会が主体となり実施している「離島巡回歯科診療」に歯学生を指導教員とともに同行させる実習であり、1984年より実施している。本実習は、鹿児島県三島村、十島村など、人口は100名前後の小さな島で展開され、いずれも医師、歯科医師は常駐していない。本実習では、無歯科医離島における歯科医療の実践支援や、歯科医師の社会的役割を理解することを学修目標としている。 「地域歯科医療実習」は、離島の中でも比較的人口の多い種子島、奄美大島、徳之島、与論島における歯科診療所で展開される実習である。離島は本土と異なり、住民の生活環境や食生活、経済状況や価値観、文化や自然環境が多様であり、医療を実践する上で患者ニーズの把握や理解はとても重要である。このような環境は、地域医療を実践的に学ぶための資源が豊富に揃っており、本学の臨床教授、臨床講師が経営する各島の歯科診療所において教育が行われている。 鹿児島県の各離島の高齢化率は全国平均と比較しても高く、また住民の皆さんが住み慣れた一定の地域で健康的で豊かな生活を送るといった地域包括ケアシステムの考え方が必然的に実践されている。すなわち、離島は地域医療を学修する資源としても最適かつ最先端であると考えられる。本学は、このような地域住民の健康増進に多面的に寄与する一方で、地域医療に貢献するマインドを持った医療者の育成にもさらに力を注いでいく予定である。